ヴィンテージの革ジャンを見ていると、肘や肩、袖口だけが茶色くなった黒いジャケットに出会います。あれが茶芯(ちゃしん)です。黒く仕上げた革の芯(内側)が茶色で、擦れて表面が薄くなった場所から、下地の茶色が顔を出してくる。使った人の動きがそのまま模様になる、革ジャンならではの育ち方です。
なぜ芯が茶色いのか
もともとは、狙って作られたものではないと言われています。1930〜50年代に黒い革を作るとき、下地を茶色に染めてから黒を重ねる工程が一般的で、当時の染色では色が芯まで入りきらなかった。結果として「表面は黒、中は茶色」という断面の革ができあがりました。それが着込むうちに擦れて、下の茶色が出てくる。
つまり茶芯は、当時の技術の副産物です。いまは均一に染める技術があるので、茶芯は「わざわざそう作る」ものになりました。

どこから茶色が出てくるか
出る場所は決まっています。肘・肩・袖口・裾・前立て・ポケットの口。体が動いて他のものと擦れる場所です。バイクに乗る人、毎日着る人ほど早く、置いておくだけでは出ません。
色の出方には順番があります。はじめは全体がうっすらグレーがかり、次に角の立った部分(縫い目の際、肘の頂点)が茶色く抜け、最後に面として広がっていきます。1年目より3年目、3年目より10年目のほうが面白い、というのはこの積み重ねのことです。
選ぶときに見るところ
- 断面(コバ):裾やポケットの切り口を見ると、黒の下の茶色が見えます。ここがいちばん確実です。
- 塗装の有無:表面を顔料で厚く塗った革は、擦れても塗膜が剥がれるだけで、きれいな茶色は出ません。無塗装(アニリン)に近いほど、育ち方が素直です。
- 革の厚み:薄い革は表面が抜けるのも早いぶん、深みが出る前に穴に近づきます。馬革の1.2〜1.4mm前後が、育てる前提だと扱いやすい厚みです。
REAL SIMONS の茶芯
私たちが茶芯に使うのは、主にポーランド産の馬革です。ベジタブルタンニンで鞣し、水染めで色を入れ、表面には塗装をかけません。手入れの手間は増えますが、そのぶん擦れた場所から素直に茶色が出ます。
同じ「茶芯」でも、鞣しと仕上げで表情が変わります。
- カフェレーサー ライダース J-100 茶芯 ホースハイド|芯の茶が明るく、コントラストが出やすいタイプ
- レーシングレザージャケット パデッド パドヴァ茶芯 ホースハイド|柔らかいオイルワックス仕上げ。フルグレイン・無塗装
- レーシングレザージャケット パデッド オイルワックス茶芯 ホースハイド|同じ型で、こちらは油分の多い仕上げ
- A-2 フライトレザージャケット 23380 ホースハイド|フライトジャケットの茶芯
- シングルライダース MENDOZA 二代目 茶芯 ホースハイド|1930年代のコサックスタイル
ほかの茶芯モデルはライダースとフライトジャケットから見ていただけます。
育てるときの注意
- 水濡れに気をつける。無塗装の革は水を吸います。濡れたら乾いた布で拭き、風通しのよい日陰で自然乾燥させてください。
- 最初からクリームを塗り込まない。油分を足しすぎると擦れにくくなり、茶色が出るまでが遠のきます。乾いてきたと感じてからで十分です。
- 畳んで長期保管しない。折り目の位置にだけ色が出てしまいます。肩幅の合ったハンガーで吊るしてください。
茶芯は、買った時がいちばん綺麗な服ではありません。着た年数がそのまま出る革です。